こんなの見たことがない。
フィッシュレザー、アトランティックサーモンの所作です。
※北欧の大西洋を泳ぐサーモンの革
まずは魚皮について。
近年サスティナブル(持続可能な)というワードを目にする耳にすることが多くなっています。とはいえ、環境問題は今にはじまったわけではありませんし、みなさまも同じように子供の頃から身近に学んできたことだと思います。
革製品=動物の皮
食用の副産物として、*皮から革へ活用しています。これは人類が生み出した最古で最大のエコシステムです。”もったいない”という考えに対しての行動の先にあるものではないでしょうか。
*皮 Skin → 動植物の外表を覆っている膜。
革 Leather → 皮から毛や脂肪を取り除き、腐敗や硬化することを防ぐためになめし加工されたもののこと。
ぼくたちは魚を食べます。
”いただきます”の言葉どおり、命をいただき、糧にします。
牛の皮はご存じのとおりですが、魚の皮は?
恥ずかしながら、ぼくは今までそのことについて考えたことすらありません。
少し角度を変えますが、日本の漁獲量は気候変動などの原因により年々減少しています。約30年で3分の1に。
参照元 : 水産庁 https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/r01_h/trend/1/t1_f1_1.html
加えて、近年の原油高の影響により生活の中で価格高騰を感じている方も多くいらっしゃると思います。
さらに
年間数万トン、いわゆる食べられるところ以外のほとんどが廃棄されています。
近年、フィッシュレザーとして
捨てられる魚の皮などをアップサイクル(創造的再利用)して、サスティナブルなものづくりに活かしている企業、または人がいます。
あくまで体感ですみませんが、少しずつ増えているように感じます。
ですが、現実的にはまだまだ
牛革と同じように、なめす(皮から革)ことはできません。
魚臭さや脂が抜けない、耐久性などの問題と向き合い、試行錯誤を繰り返して、今までに見たことがないフィッシュレザーが世に誕生しつつあります。
例え、魚の皮のアップサイクルがうまくいくとして(市場で受け入れられることも含めて)それは数年後、数十年後、数百年後先のことかもしれません。
携帯電話すら最初は車専用、持ち歩くなんて考えられない大きさのものでしたし、インターネットで世界中の人が繋がるなんて誰も考えなかったことです。ほんの数年前までは。
この所作は近い未来への取り組みのひとつ、でもあります。
さて、本題です。
大西洋の波に揉まれた野生味があるウロコ模様。
紺色から白い色へと美しく、グラデーションがまさに自然のデザインです。
手触りは、フィルムに覆われているのでツルッとしていて、独特のテカリ(光沢)があるためか、ほんのり涼し気にも見えます。
なんと
12匹のサーモン革が1本のロングウォレットに。
サーモン革の形や大きさにより、ひとつひとつパーツを吟味し、真っ直ぐではない配置にしています。
ストライプ。
それだけで、とても洗練された印象を受けます。
パッと見て、フィッシュレザーだと気づく方はおそらく多くないと思いますが、視線を感じて「なんの革でしょう?」と思わず言いたくなることが想像できます。
そして、一番伝えたいポイントは
サーモン革の斜めと、裏に貼っている牛革の斜めがずれていること。最初これに気づいた時に、純粋に混乱しました。
まずじっくり左右の2枚を見比べてください。
人差し指の◯は同じ部分を指しています。
表と裏の継ぎ目の場所がズレていることがわかりますか?
「表のサーモンの点線」と「裏の牛革(黒)の継ぎ目」が異なります。
一番上のように
真っ直ぐ貼り合わせているようなイメージだと思いますが、それだと脆くて、かつ補強のための糸などの繋ぎ目ができてしまいます。また、二番目のように重ねることで強度は高まりますが、凹凸ができます(重なる部分が膨らみボコっと)。
黄色線のように、斜めに貼り合わせることで強度を高め、かつサーモン革同士の繋ぎ目を失くすかのように、触ったときの凸凹が少なくなっています。
あまりに自然なので、実際に触ったとしても違和感がありませんので、ここで読まない限り気づかないことかもしれません。
では、なにがすごいの?って思われると思うのですが、違和感がないにも関わらず、強度が増していることの技術や熱意がすごいのです。
簡単に説明しましたが、恐ろしく技術や手間がかかる手作業です。
貼り合わせる両面を斜めに薄くして、貼り合わせます。それを2枚3枚と繰り返して、合計12枚。ロングウォレット大の革を完成させます。
そもそも革の厚みは約1mmです。
0.1mmでもずれると製品としてガタガタになります。また両サイドを薄くするのにもずれが出ると、ボコボコになったり、と。考えるだけで恐ろしく気が遠くなる作業です。
もう一点。貼り合わせているはずなのに、断面に違和感がありません。
見ただけでは、何もわからないです。
頼む方も頼む方だが、やる方もやる方だと。
そう感じました。
(宮大工のクギを使わずに強度を高める建築技法をみたときのようなリスペクト)
先述ではありますが
言われないと気づかないので、ぜひとも感じてほしい1mm以下のせめぎ合い。美意識。
シルバーメッキのブランドタグ。
通常は真鍮タグを用いていますが、シルバー925をコーティングしており、いつもより白いのが画像でもわかると思います。
高級感が増していて、特別で違いのある経年変化をお楽しみください。
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サーモン所作 ロングウォレット ¥110,000 taxin
8月8日(火)
オンラインショップ 12:12~
東京本店は9日の営業開始 (15:15~) よりリリースいたします
※オンラインショップでは3点同時に並びますので個体差を吟味ください。
どうぞ皆様、サーモンの行方、ならぬ未来を見守ってくださいませ。
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裏の牛革にハリがあるので、
魚の革とは思えないほどの厚みと使い心地です。(少し硬めをご想像ください)
表面にはフィルムを貼ることで、ツルッとして(凹凸が少ない)いるので、魚感はありません。加えて経年による劣化を予防しています。
とはいえ、フィッシュレザーは未知な部分が少なくありません。
例えば、価格。
通常のシリーズと比べて3倍以上の値段ですが、牛革よりもはるかに小さい革を一枚一枚加工することの手間、費用がかかります。また、厚みや強度など物性が安定させるために通常の所作革を裏に用いています。今後市場自体が大きくなると、価格は安定するであろうとは思いますが、現在のところ不明です。
いかがでしょう。
魚の革に見えますか??
きっと今までに誰も?見たことがない魅力。ぜひご堪能くださいませ。
__ 世界に4本!サーモン所作取り扱い店舗 __
『ノーノーイエス 東京本店』
A : 渋谷区千駄ヶ谷3-2-8
T : 03-3408-2706
M : tokyo@nonoyes.co.jp
営業時間15:15~19:19 定休日 : 月曜・火曜
→ 8/4 東京本店限定
革の王様=クロコダイルを用いた所作シリーズの王様。所作クロコダイルがリリースです。
https://www.nonoyes.co.jp/by-logie/47129/
あとがき
今回、ブログを書くにあたりたくさん学びました。
あたりまえですが、世の中は知らないことで溢れています。一生かけても知らないことはなくなりません。ですが、知ることが豊かさにつながるとも信じています。
たくさん廃棄される、魚の皮。
身近に、食卓にならぶ 美味しい“サーモン”。
無意識でも、スーパーに行ったときでも、
実際に食べるときでも、
サーモン所作を手に取った、見たときでも
われわれにとって、
地球にとって、
ごく一部のことではありますが
考えて意識できる時間、また未来への行動につながってくれると嬉しい限りです。とても大層で大袈裟なことかもしれませんが。
日本の漁獲量は減少していますが、世界的には増加しています。廃棄と言っても「いらない=捨てる」ではなく、物事は単純ではありません。ぼくたちができることを考えていきましょう。
参照元 : 農林水産省 https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2010/spe1_01.html
nakabayashi